もし泥棒が「本物の鍵」を持っていたら、あなたはどうやって被害に気づくでしょうか。
ガラスは割られない。
ドアもこじ開けられない。
車は何事もなかったように、いつもの場所に停まっている——。
そんな「気づけない窃盗」が、実際に起きました。
今回は2026年10月に報道された山梨県甲府市の事件を入り口に、ホームセキュリティとカーセキュリティの「境目」で起きる盗難について考えます。
甲府で起きたこと——「スペアキーごと」盗まれた
報道によると、事件の概要はこうです。
住居不定・無職の45歳の男が、住居侵入と窃盗の疑いで逮捕されました。
男は2026年7月27日頃から30日頃までの間、甲府市内の民家に侵入し、敷地内に駐車していた車の中から3回にわたり合計48万円の現金を盗んだ疑いが持たれています。
注目すべきは手口です。
男は民家から車のスマートキーの「予備」を盗み出し、そのキーを使って車内を物色していたとみられています。
住人が被害に気づいて届け出たことで捜査が始まり、逮捕に至りました。男は容疑を認めており、警察が余罪を調べています。
数日の間に3回。つまり犯人は「また来ても気づかれない」と判断して、繰り返し戻ってきたことになります。
なぜ3回も気づかれなかったのか——「破壊しない侵入」の怖さ
空き巣被害の多くは、割れた窓やこじ開けられたドアといった「痕跡」から発覚します。
壊された跡があるから、住人は「入られた」と確信でき、すぐ警察に届け出られる。
ところが正規の鍵で開けられると、この痕跡がありません。

- 車のドアは普通に開き、普通に閉められる
- ガラスも鍵穴も無傷
- 車内の現金が減っていても、「自分の勘違いかも」と思ってしまう
「何かおかしい」と感じても確証が持てず、届け出が遅れる——。犯人側から見れば、壊さず入れる鍵の入手は「何度でも通えるフリーパス」になり得るのです。今回の事件で犯行が複数回に及んだことは、その怖さを物語っています。
盲点だった「スペアキーの置き場所」
車の盗難対策として、「スマートキーを玄関に置かない」という話は近年よく知られるようになりました。
キーの微弱電波を中継して車を開けるリレーアタック対策として、電波遮断ポーチや缶に入れる方法が広まっています。
しかし今回の事件が突いたのは、その先の盲点です。——スペアキー、どこに置いていますか?

多くの家庭で、スペアキーは「使わないもの」として無造作に保管されています。
- 玄関のキーフックに、メインキーと並べて
- 下駄箱の上の小皿や引き出しの中
- リビングの「鍵置き場」にまとめて
来客からも、窓越しからも、そして侵入者からも「見つけやすい場所」です。
家に入られた時点で、車の鍵まで渡してしまう配置になっていないか——今回の事件は、すべての車所有者への問いかけでもあります。
スペアキーは人目につかず、玄関から離れた場所に。これだけで「家への侵入が車の被害に直結する」リスクを下げられます。
「家の防犯」と「車の防犯」は、つながっている
この事件がもうひとつ教えてくれるのは、家と車のセキュリティは別物ではないということです。
車の防犯というと、ハンドルロックやタイヤロック、駐車場所の選び方を思い浮かべます。
しかし鍵が家の中から盗まれれば、車側の物理対策はほとんど意味を持ちません。
逆もまた然りで、車内に家の合鍵や住所のわかる書類を置いていれば、車上ねらいが自宅侵入の入り口になります。
つまり守るべきは「家」と「車」ではなく、敷地全体=わが家のセキュリティ圏。玄関・窓・駐車場をひとつの面として考える必要があるのです。

「本物の鍵」で開けられても、気づける対策はある
ここで、冒頭の問いに戻ります。犯人が本物の鍵を持っていたら、どうやって気づくのか。
鍵やロックは「正しい鍵」の前では働きません。しかし、センサーとカメラは鍵の正しさを問いません。
- 開閉センサー——窓やドアが「開いた」事実そのものを検知してスマホに通知。合鍵だろうが正規のキーだろうが、開けば気づけます
- 人感センサー——深夜、敷地や室内で人が動けば反応します
- 防犯カメラ——駐車場と玄関を映しておけば、「誰が・いつ・何をしたか」の記録が残ります。被害の確証が持てず届け出をためらう、という今回のような構造を断ち切れます
今回の事件も、住人が被害に気づいて届け出たことで犯人逮捕につながりました。
「気づく」ことは、被害を止める力であり、犯人を捕まえる力でもあります。
もし駐車場にカメラがあれば、もし車や家のドアの開閉が通知されていれば、2回目はなかったかもしれません。

まとめ
- 甲府市で、民家からスマートキーの予備を盗み、その鍵で車内の現金計48万円を3回にわたり盗んだとされる男が逮捕された
- 正規の鍵による侵入は破壊の痕跡がなく、発覚が遅れやすい。「何度でも通える」状態になり得る
- スペアキーの置き場所は盲点。人目につかず、玄関から離れた場所へ
- 家に入られれば車も危ない。「家」と「車」を分けず、敷地全体をひとつのセキュリティ圏として考える
- 鍵・ロックは本物の鍵に無力でも、開閉センサーとカメラは「開いた事実」を検知する。”開けられない対策”に”開けたら気づく対策”を重ねよう
鍵は、正しく使われることを前提に作られています。その前提が崩れたとき、あなたの家と車を守るのは「気づく仕組み」です。
スペアキーの置き場所の見直しと一緒に、ぜひ検討してみてください。



